「房総グランオテル」越谷オサム著
シーズンオフの平日、高2の夏海の両親が営む外房・月ケ浦の「房総グランオテル」に3人の宿泊客がやってきた。名前は仰々しいが、中身は家族経営の漁師民宿兼食堂だ。長髪で革ジャケットに赤パンツの中年男・菅沼をはじめ、陰気な女性の一人旅・佐藤、そしてカメラバッグを提げた素泊まりの田中と、3人はいずれも訳ありの様子。夏海は佐藤が死に場所を求めて当地に来たのではないかと疑い、積極的に話しかけるが反応は薄い。
一方、鉄道マニアの田中の目的は、以前、月ケ浦の駅で撮影した写真に偶然写っていた美少女との再会だった。夏海らは気づいていないが、死に場所を求めてこの宿にやって来たのは菅沼だった。
人懐こい民宿の看板娘と訳ありの客たちが織りなす人間ドラマ。
(祥伝社 770円)