「山狩」笹本稜平著
南房総の伊予ケ岳の断崖の岩棚で若い女性の死体が発見された。村松由香子、23歳。事故か自殺と思われたが、千葉県警生活安全捜査隊の山下正司は不審に思った。由香子は1カ月ほど前にストーカー被害を訴えていたのだ。
元警察官の由香子の祖父、謙介は、由香子がストーカー男に殺されたのではないかと疑いを持った。ストーカーは門井彰久という男で、学生時代に準強制わいせつ罪で逮捕されている。門井の父親はゴルフ場などを経営している門井健吾で、かつてゴルフ場用地の買収問題で謙介との間でトラブルが起きたという因縁があった。
ところが所轄の安房署の刑事課の川口は、村松謙介はクレーマーだと言い出して、捜査の妨害を図る。川口はマル暴担当の評判の悪い刑事だった。著者の遺作となった警察小説。
(光文社 1870円)