「家康の女軍師」近衛龍春著
側室ながら、家康とともに関ケ原などの戦陣に何度も立ち、将軍の影武者、軍師として活躍した実在の女性、於奈津の方の生涯を描く歴史小説。
文禄5(1596)年、卯乃が伊勢の津で運送・海運業を営む「乳切屋」に奉公して十余年が経った。16歳になった卯乃は、今ではその才覚を認められ、女番頭として店の商いの一切を切り盛りしている。その働きぶりが京から来た呉服商の茶屋の目に留まり、茶屋が出入りする徳川家への奉公話が持ち上がる。没落した元武家の一族の再興を願う卯乃には願ってもない話だった。
卯乃が侍女として働きだした京・二条の徳川屋敷に、ある夜、賊が侵入。卯乃の機転で入浴中だった家康は命を救われる。才覚を認められた卯乃は、家康から側室になるよう請われる。
(新潮社 825円)