「戦百景 桶狭間の戦い」矢野隆著
信長が家督を相続して7年。周囲からうつけとそしられ、重臣たちからも見限られた信長だが、邪魔者を殺し、戦に勝ち続けることによって、織田弾正忠家の総領であり続けてきた。
ある深夜、弟・信行の家臣・柴田権六が信長を訪ねてきた。衆道相手に執心する主を見限り、信行が謀反を企んでいることを告げにきたのだ。すべては信長の知るところではあるが、権六にはこれまで通り信行に接するよう命じ、信長は翌日から病の床に就く。信行を誘い出すための仮病だ。思惑通り、見舞いに現れた弟を始末した信長のこれから先の敵は、義父の道三を殺した斎藤義龍と、駿河遠江に加え三河を手中に収めつつある今川義元だった。
「桶狭間の戦い」を信長と義元の双方の視点から描く歴史小説。
(講談社 814円)