「『アキラさん』は音楽を楽しむ天才」宮川彬良著
幼いころ、和式トイレにはいつもヌード写真の載った週刊誌が積み上げられていた。5、6歳の少年アキラも納得するような美しい「曲線」が描かれていて、後に作曲家になったアキラ少年は、メロディーとは突き詰めていえば「曲線美」のことだと気づき、この経験が親子間の作曲のレッスンになっていたことを知る。
「宇宙戦艦ヤマト」を作曲した父、宮川泰の遺言は「俺が死んだらヤマトな」だった。
葬儀の日、棺を載せたキャデラックのドアが閉まったとき、ブラスバンドが演奏を始めた。♪さらば~地球よ~。父はこの曲で旅立ちたかったのだ。
作曲家の苦闘と愉悦の日々を描くエッセー。
(NHK出版 1650円)