「背進の思想」五木寛之著
コロナ禍を生きる日々でつづられたエッセー。
新型コロナとともに50年来の生活習慣を切り替え、夜型から朝型人間へ転向。携帯電話はガラケーで、外出時には持ち歩かず、支払いも現金だけだが、高齢者だからといってそれらに固執しているわけにはいかないと肌で感じるようになった。生きていくなら、時代に適応しなければならず、デジタル時代にはデジタルな人生観が必要なのだと痛感。
しかし、適応するとは前に進むということだけでなく、後ろを向きながら前に進む生き方もあると説き、それを「背進」と名付ける。そのひとつとして、断捨離の風潮に反し、不要なものを捨てることをやめたその心情を明かす。
他にもワクチン接種で考えたことなど、日常の視点から思索を重ねる。
(新潮社 858円)