「鬼哭の剣」進藤玄洋著
商人ながら小野派一刀流の使い手である充右衛門は、師匠に引き合わされ、弘前津軽家の嫡男・信重の稽古相手を務める。後日、信重から屋敷に呼び出された充右衛門は、江戸では見かけぬクロユリの花を見せられる。数日前に、隠居した忠臣の蠣崎の遺体がさらされ、花は切断された首の口にくわえさせられていたものだという。
信重から花の出どころを調べて欲しいと頼まれた充右衛門は、旧知の植木職人を訪ねる。居合わせた本草学の権威によるとクロユリは蝦夷から持ってきたものに違いないという。かつて蝦夷にいたことがあるという本行院の寺男・伝兵衛に聞くと、クロユリは呪いを意味するらしい。
その20年前、和人によって部族長を誅殺されたアイヌのメナシクル族の復讐劇を描く時代長編。
(早川書房 1122円)