「赫衣(あかごろも)の闇」三津田信三著
昭和20年の夏、探偵の物理波矢多(もとろいはやた)は満州の建国大学時代の同期生、熊井(くまがい)新市から手紙をもらって上京した。宝生寺の闇市の「赤迷路」と呼ばれている狭い路地で、全身が赤っぽい姿の男が若い女性をつけ回すという。
ある夜、パンパンのアケヨが赤迷路を歩いていると、湿った地面を踏みしめながら、じた、じた、じたっという音がついてくる。恐怖に駆られたアケヨは必死で走って、スミコの店に駆け込む。すると、店にいた女が、赤い服を着た男がアケヨを訪ねてきたと言う。しばらくして、凄惨な殺人事件が起こる。
戦後の混乱を背景に、闇市に出没する「赫衣」の謎に物理波矢多が挑戦する。
(文藝春秋 1980円)