「平家物語 犬王の巻」古川日出男著
海人の一族に生まれた友魚は、ある日、都からきた連中に与えられた地図をたよりに父と海に潜る。引き揚げた剣のさやをはらうと、閃光が走り、直視した友魚は目から光を、父は命を奪われる。父子が引き揚げたのは壇の浦の水中に没した草薙の剣だった。
同じころ、都で男の子が誕生。生まれたのは全身が壊れているとしか思えぬ醜怪な子どもだった。犬王と名付けられた子の生家は猿楽の一座で、兄らの稽古を真似ていた幼い犬王の足に変化が表れる。大昔の合戦のせいでなぜ光と父が奪われたのかを知るため都を目指す友魚は琵琶法師に弟子入り。たどりついた都で、ひょうたんの面をかぶった犬王と出会う。
実在の能役者を描く時代エンターテインメントで、今夏公開のアニメーション映画の原作。
(河出書房新社 693円)