「焔」星野智幸著
三流大学を出て108の企業を受けても就職できなかった七桜海(ナオミ)は、もう自衛隊に入隊するしかないと思いつめていた。友人の家を転々とする七桜海を見かねた姉の家に転がり込み、今は1000円の報酬で姪の品紅(ピンク)の外遊びの付き添いをしている。
東京で最高気温40度超を初めて記録した日、七桜海は、品紅を連れて行った公園で小鳥や池の魚の見慣れる行動を目撃。彼らを真似して回転してみると、涼しさを感じる。数日後、公園の木に吊るしたロープに体をくくりつけて回転している青年がいた。彼に連れていかれた神社では集まった大勢の人たちが回転していた。
謎の災いを生き残った者たちが焔(ほのお)を囲んで語る9つの物語。谷崎潤一郎賞受賞作。
(新潮社 693円)