「万葉考古学」上野誠編
「万葉考古学」とは、歴史学、考古学、歌の表現という視点から平城京をみるという試みである。
例えば越中に赴任した大伴家持が、急死した弟の書持(ふみもち)を悼んで詠んだ挽歌(「万葉集」所収)に、「出でて来し/我を送ると/あをによし/奈良山過ぎて/泉川/清き河原に/馬駐(とど)め/別れし時に」という表現がある。
書持は敬愛する兄を送るために、平城京から国境(くにざかい)となる奈良山を越えて、山背国(やましろのくに)の泉川のほとりまで送って行ったのだ。その書持が急死した後、火葬されたのは奈良山丘陵の東の佐保山だった。
ほかに大伴旅人が赴任先の大宰府で詠んだ歌などを、考古学の視点で読み解く「万葉集」の入門書。
(KADOKAWA 1980円)