「夢も見ずに眠った。」 絲山秋子著
2010年9月、高之は妻の沙和子と岡山に向かう。最初に倉敷を観光する予定だったが、高之は以前から気になっていたカブトガニ博物館に立ち寄ることを提案。予定変更を嫌う沙和子は、怒って倉敷で降りてしまった。沙和子が有休をとってやっと実現した旅だったのに。沙和子もそんな自分を持て余してはいた。
翌年、金融会社で働く沙和子が札幌に異動になった。結婚当初は無職で、非正規の仕事を始めたばかりの高之は、今まで通り、婿養子に入った沙和子の実家の離れで暮らすことに。1年半後、夫婦で琵琶湖を旅した時、沙和子は夫との関係が変わりつつあることに気づく。
お互いに思いやりながらも気持ちがずれ、そして再びお互いを再発見する男女の12年間をロードムービー風に描く長編。
(河出書房新社 990円)