「猿と人間」増田俊也著
動物パニック小説である。襲ってくるのは猿だ。日本猿はかなり大きな雄でも体重は30キロ程度。犬でいえば、ラブラドルレトリバーくらいのサイズだというから、ヒグマに比べればかなり小さい。
どうしてここで、比較対象としてヒグマを出したのかというと、増田俊也はヒグマが人間を襲う動物パニック小説「シャトゥーン ヒグマの森」でデビューした作家だからである。
ちなみに、シャトゥーンとは冬ごもりに失敗し、食料を求めて雪の中を徘徊する「穴持たず」のヒグマのことだ。あれから15年、今度は猿と人間の戦いを描いたわけである。
しかし、体重350キロのヒグマに比べれば、30キロの猿など怖くない──と言われるかもしれない。ところが違うのである。やっぱり怖いのだ。本書に出てくる猿が巨大化しており、中には50キロ近くある個体までいたりするからだ。しかも、群れのボス猿はなんと90キロ近い。
さらに、注意しなければいけないのは、このボス猿が率いるのが850頭。その数の猿がボス猿の指示のもとにいっせいに襲ってくるのである。しかも、この850頭の猿は凶暴化しており、手がつけられない。
猿軍団の襲撃を、どういうふうに防ぎ、どういうふうに戦ったか、そのディテールが凄まじい。立ち向かうのは、高校生に女子大生に老婆。はたして彼らは生き残れるのか、固唾をのんで見守るのである。
(宝島社 1650円)