「やっかいな食卓」 御木本あかり著
義母が1人で暮らしている夫の実家で、不登校ぎみの小学生の息子・旬を連れて同居することになったユキと、その義母・凛子。このふたりの語り手が物語を進行していく。
こうなると、嫁姑の戦いが始まるのかと思うのは当然。ところが、そういう展開にはならない。少しはあるが、それが本書の主題ではないということだ。では、何か。
同居家族が増えていくのだ。まずは、10歳の少女・叶。凛子には3人の子がいるが、売れない画家の長男・駆はずいぶん前に事故死している(ちなみにユキの夫は次男)。ところが駆には事実婚の相手がいて、駆の死後は母娘で暮らしていたが、その母親が死去したので、10歳の少女・叶の行き場がなくなって、凛子の家にやってくる。駆の忘れ形見なら引き取るのも凛子、やぶさかではない。この少女・叶が、不登校ぎみの旬の心をほぐしていく過程がなかなかにいいのだが、それは読んでのお楽しみにしておく。
そうか、凛子の長女・涼がイタリア人の夫と、小さなイタリアンレストランを経営していることも書いておく。長男の忘れ形見を実家に連れてくるのはこの涼だ。
まだほかにも同居する家族が増えていくのだが、それは書かないでおきたい。ようするに、家族はとても面倒だけれど、しかし楽しいという真実を描く小説なのである。
本書は69歳の著者のデビュー作だが、とても新人の作品とは思えないほど、うまい。
(小学館 1650円)