「百姓・町人・芸人の明治革命」津田正夫著
「百姓・町人・芸人の明治革命」津田正夫著
明治時代に「オッペケペー節」を歌い自由民権運動を広めた川上音二郎のパートナー、川上貞奴は、日本の近代演劇の基礎を築いた人物である。
江戸時代初期には出雲阿国が始めた女歌舞伎があったのに、幕府が「風紀を乱す」と禁止したため、以後は女形が女役を演じるようになった。明治座で「オセロ」を上演した音二郎は、世界に通用する演劇を上演するために、「男女両性からなる役者集団」をつくろうと考えた。貞奴は帝国劇場をつくった実業家、渋沢栄一の支援を受けて、「帝国女優養成所」を開設し、女優の養成に当たる。日本では俳優をさげすむ風潮があり、女優の養成が芸者の育成と同じようにみられてさげすまれた。だが、貞奴の恋人といわれた福沢桃介(諭吉の養子)の協力を得て、シェークスピア劇を次々に上演する。
ほかに、1884年に美濃加茂で起きた民権一揆など、庶民が体験した明治革命を検証する。
(現代書館 2420円)