「一球の記憶」宇都宮ミゲル著
「一球の記憶」宇都宮ミゲル著
ジャイアンツの江川卓は「怪物」といわれた投手だった。江川の球速はほかの投手とは別次元で、バッターはみな「ボールが浮き上がって見えた」という。
マウンドからストライクゾーンに投げれば実際は「落ちる」のだが、江川自身も視覚として球が浮き上がる感覚があった。球がうまく回転したとき、ふわんと上がる感覚があった。江川の球の回転軸が地面ときっちり平行だったからではないかという推論もある。江川も「重力に逆らって浮く球」を目指していた。
ホームランバッターが打席に入ると歓声が湧くが、対決の瞬間には一瞬、音が消える。その瞬間が最高に面白いと。
球場のドラマを37人が語る。
(朝日新聞出版 2178円)