「虎と十字架」平谷美樹著
「虎と十字架」平谷美樹著
元和元(1615)年、陸奥国の南部信濃守利直は、カンボジアから徳川家康に贈られた虎2頭を拝領した。
雄は乱菊丸、雌は牡丹丸と名づけられて城内で飼われていたが、ある日、それぞれの檻(おり)に老女と若い女の死体が投げ込まれた。その日は檻の扉が開かれていて、2頭の虎は外に逃げ出した。牡丹丸は利直の三男、重直に鉄砲で撃ち殺され、マタタビでおびきよせられた乱菊丸は投網で捕らえられた。
拝領の虎なので檻の番人が切腹したが、徒(かち)目付の米内平四郎は、切腹のあと、首を切られたとき、番人が立っていたことを示す血の流れに気づいた。檻に投げ込まれた2つの遺体はキリシタンの女と判明したが、やがてその死体も消える。
拝領の虎の脱走をめぐる時代ミステリー小説。
(実業之日本社 2090円)