『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』シーナ・アイエンガー著・櫻井祐子訳/ニューズピックス

公開日: 更新日:

『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』シーナ・アイエンガー著

 全盲の心理学者で米コロンビア大学ビジネススクール教授をつとめるシーナ・アイエンガー氏のイノベーションに関する労作だ。「最高の発想」(THINK BIGGER)についてアイエンガー氏はこう説明する。

<幼い頃から見えない世界で育った私は、この大きな問題にくり返しぶつかっている。/私は1人で料理をつくれるだろうか?/いつか世界を1人で旅行できるだろうか?/科学者になれるだろうか?/舞台に立って話ができるだろうか?/こうした問いへの答えが「イエス」だということも、「どうやって」やるのかも、今の私は知っている。その知識には、私自身の格闘から得たものもあれば、問題解決の謎を解き明かす最新研究の宝箱から得たものもある。/それらをもとに書いたのが、あらゆる種類の複雑な問題を解決するために、新しい選択肢を生み出す手法を説明する、本書だ。この手法を、「Think Bigger」(もっと大きく考える、大胆に発想する)と名づけた>

 本書に書かれている事柄は、アイエンガー氏自身が体得したもので、標準的努力が出来る人ならば誰でも実行可能だ。特殊な才能は必要とされない。

 アイエンガー氏はイノベーションの本質についてこう述べる。
<世界のどんな革命的なイノベーションも、身近な要素でできていることを知ると、勇気と希望が持てる。イノベーションはとても困難なものだといまだに考えられているのは、見当違いの取り組みが行われてきたからだ。私たちは新しい要素を生み出すことはできない。できるのはただ、古い要素を新しい方法で組み合わせ、組み合わせ直すことだけなのだ>

 イノベーションで成功する人に求められるのはゼロから1をつくり出すような天賦の才能ではない。既存の技術や学知を結びつける、あるいは見せ方を変えることなのだ。

 この技法はインテリジェンスにも似ている。評者は外務省主任分析官をつとめた時期にモサド(イスラエル諜報特務局)の傑出した複数のインテリジェンス・オフィサーと親しく付き合った。男女を問わず、この人たちは歴史によく学び、既存のインテリジェンスと学知を結びつけるのに長けていた。 ★★★(選者・佐藤優)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  2. 2

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  3. 3

    元フジ中野美奈子アナがテレビ出演で話題…"中居熱愛"イメージ払拭と政界進出の可能性

  4. 4

    中居正広氏は元フジテレビ女性アナへの“性暴力”で引退…元TOKIO山口達也氏「何もしないなら帰れ」との違い

  5. 5

    芸能界を去った中居正広氏と同じく白髪姿の小沢一敬…女性タレントが明かした近況

  1. 6

    中居正広氏と結託していた「B氏」の生態…チョコプラ松尾駿がものまねしていたコント動画が物議

  2. 7

    中居正広氏、石橋貴明に続く“セクハラ常習者”は戦々恐々 フジテレビ問題が日本版#MeToo運動へ

  3. 8

    中居正広氏が女子アナを狙い撃ちしたコンプレックスの深淵…ハイスペでなければ満たされない歪んだ欲望

  4. 9

    中居正広「華麗なる女性遍歴」とその裏にあるTV局との蜜月…ネットには「ジャニーさんの亡霊」の声も

  5. 10

    SixTONES松村北斗 周回遅れデビューで花開いた「元崖っぷちアイドルの可能性」