著者のコラム一覧
篠綾子作家

1971年、埼玉県生まれ。2001年、第4回健友館文学賞受賞作「春の夜の夢のごとく 新平家公達草紙」でデビュー。著書に「青山に在り」「江戸菓子舗照月堂」シリーズなど多数。

(10)香りの質は捏ね具合で決まる

公開日: 更新日:
イラスト・鈴木ゆかり

(三)

 ──伽羅と秘伝書のことは心配するな。丹波屋にしてやられるような真似はしない。お前は春翠の再現に専念しろ。

 父の香四郎からそう言われ、おみつはうなずいた。

 梅里の妻の命日は十二月下旬だから、あまりのんびりはしていられない。だが、丹波屋の出方はともかく…

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