(15)ゆっくりと目を開け「ああ、これだ」
十二月二十日は、梅里が仙薫堂に来る約束の日だ。春も近いこの日、朝から雨が降っていた。外出には生憎の空模様だが、練り香を薫くにはちょうどよい。雨の日は香りが強く感じられるのだ。
乾燥させる線香と違い、練り香は湿り気を帯びた状態で使う。作った後、壺の中で寝かせておく時も軒下…
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