「現代コリア、乱気流下の変容:2008-2023」A・V・トルクノフ/G・D・トロラヤ/I・V・ディヤチコフ、下斗米伸夫(監訳)/作品社(選者・佐藤優)

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「現代コリア、乱気流下の変容:2008-2023」A・V・トルクノフ/G・D・トロラヤ/I・V・ディヤチコフ、下斗米伸夫(監訳)/作品社

 ロシアの北朝鮮研究の水準が高いことを示す好著だ。3人の研究者は、いずれもプーチン政権の対北朝鮮政策に影響を与えることができるプレーヤーである。

 特にトルクノフ氏(1950年生まれ)は、1992年からモスクワ国立国際関係大学の学長をつとめている。この大学は、外交官、インテリジェンス・オフィサー、ビジネスマンを輩出している高等教育機関として有名だ。SVR(ロシア対外諜報庁)と緊密な関係を持つ特殊な大学である。

 興味深いのは慢性的な労働力不足に苦しめられているロシア極東部において、北朝鮮人労働者がとても魅力のある存在になっていることだ。

<二〇一七年には三万二〇〇〇人以上の労働者がロシアで働いていた。そのうち四%の一万四〇〇〇名が極東にて働いていた。残りはロシアの大都会である。最低七〇%以上が建設部門と家屋の修繕にあり、残りは漁労、農業、そして森林伐採に従事していた。/朝鮮人労働者の平均賃金は三〇〇ドル平均と相対的には安いものの、それでも地元で働くか、中国で働くよりは高い。ロシアで働くためには五〇〇-七〇〇ドルの代金か賄賂が必要だが、ちなみに中国では二〇〇ドルですむ。ロシアで平均二-三年の勤労を終えると、間接的には収入の五-七割を国家貢納金として納めるものの、それでも北朝鮮の基準ではこの金は相当なものとなり、期間が終わると二〇〇〇-四〇〇〇ドルを持って帰国できる。これらの資金で、家族経営の小売りの商店を始めるとか、レストラン、裁縫作業場、医療、また子供の教育費に充てることもできる>。

 ロシア極東には軍産複合体の工場が多く、さまざまな装備品を造っている。北朝鮮の中等教育(日本の中学、高校に相当)の水準は高い。特に工場労働で必要になる応用数学、電気、機械、簿記などの教育が充実してる。ロシア・ウクライナ戦争が長期化する中で、ロシアの軍事産業では労働力不足が深刻になっている。5月中旬にロシアのプーチン大統領が北朝鮮を訪問するとみられている。この際に北朝鮮からロシアの軍事工場に労働者を派遣する新たな仕組みが出来るかもしれない。 (2024年4月4日脱稿)★★★

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