「あなたを待ついくつもの部屋」 角田光代著
「あなたを待ついくつもの部屋」 角田光代著
感染症によるパンデミックで緊急事態宣言が出された夏、脚本家の楡原真哉は都心の老舗ホテルの長期滞在プランを利用することに。
1週間ほどたったころ、毎晩見る夢が系統立っていることに気づく。毎回違う宿に泊まる夢で、1日目は2年前に妻と泊まったホーチミンのコロニアルホテル、翌日は4年前に仕事で泊まった京都のデザイナーズホテル、次は5年前に義父の葬儀で泊まった葬儀場の和室……。8月下旬になると結婚前に1人旅で泊まった安宿が出てくるようになる。隣の音が聞こえたり、虫が出る宿。ベッドで残りの金を数えていたあの頃……。(表題作)
ホテルを舞台にした42の掌編小説。 (文藝春秋 1705円)