(76)喜三二、春町、重政が思案
黄表紙の総本山、鱗形屋の店先は黒山のひとだかり。
「どけ、散れ! 片っ端からしょっ引くぞ!」
役人が野次馬を蹴散らす。蔦重は爪先立ちになり群衆の後から覗き込んだ。
「鱗形屋孫兵衛……」
傲慢ながら辣腕の大男が身を屈め、眼を伏している。手にはお縄。ふと…
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