plateau books(白山)設計事務所代表が価値を付け直した“本と空間” おっ、配列が面白い
1970年代築のビルだそう。狭い階段を2階に上がり、ドアを開けると、広がっていたのは、ニュアンスのある広~い空間。
真ん中に、ユーズド感いっぱいの大テーブルが置かれ、本棚にも同じ匂いが。天井は高く、コンクリート壁が私には漆喰のように見えたりする。
「以前は精肉店として使われていたそうです。2019年に、事務所を東日本橋から移すとき、本屋を合わせてやっていけるかもーと、設けました」
と中里聡さん(47)。名刺をもらうと東京建築PLUS代表取締役とある。ここは、本業の店舗設計の事務所の隣。本屋さんとの縁は、あゆみブックスなど多くの書店の内装も手掛けてきたことのよう。
「本屋運営は難しい」といわれる中、今も「本業とを合わせると可能か」を模索中とのことで、「すでにあるものに、どう価値を付けてあげるかですよね」とも。ええっと、「すでにあるもの」は、空間と本の両方を指します?
「そうそうそう。本にも読むタイミングがあるから」
あー、分かる、と思った。良きタイミングをくれるのが本屋さんだもの。
全集からエッセーまで人文書全版約8000冊
約20坪に、目下は人文書全般約8000冊がとてもゆったりと並んでいる。おっ、配列が面白いな。牧野富太郎の本がずらりのところから左に目をやると、ヘルマン・ヘッセ「庭仕事の愉しみ」、西岡常一・小川三夫・塩野米松著「木のいのち 木のこころ」が現れる。須賀敦子全集からは「夫婦間における愛の適温」「はじめての胃もたれ」などライトな“暮らし”カテゴリーの本へと続く。かと思えば柚木沙弥郎のエッセーや系譜本が固まった箇所も。
「お読みになって印象的な本を一冊、挙げてください」と言うと、中里さんは、一拍置いてから、岸政彦編「東京の生活史」を手に取った。あの、150人が登場するインタビュー集だ。
「あとがきにあった岸さんの言葉がいいんですよ。『東京の縮図ではなく、生活している人の切り取り以上でも以下でもない』といった意味の」
店内でコーヒーも飲める。話すことが第一義のイベント「ぷらっと対話」も継続開催されている。
◆文京区白山5-1-15 ラークヒルズ文京白山2階/都営三田線白山駅A1出口から徒歩5分/金・土・日曜の12~18時に営業
うちの推し本
「冬の植物観察日記」鈴木純著
著者は、野山ではなく、都市環境をフィールドにした“植物観察家”。
「たとえば、この店のすぐ近くの白山通りにも実は草花がいろいろ生えています。え? こんなところに? と思うような場所にも。そして、それらには当たり前に名前があり、ほかの場所に生えているものと接点があるんですよね。この本は、秋から春までの6カ月間、著者が植物観察をした日記。すごく面白いですよ」
(雷鳥社 2090円)