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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

「みつばち古書部」(大阪・阿倍野)シェア型書店の第1号が文の里商店街に

公開日: 更新日:

 箱形の本棚スペースを借り、誰もが“小さな本屋”になれるシェア型書店。今や全国に100軒以上できているが、その第1号が2017年7月オープンの、ここ「みつばち古書部」。昭和のにおいが満ちる文の里商店街にある。

「空き店舗のオーナーさんから声がかかり、商店街イベントに参加。1日だけスペースを借りて営業したのがきっかけでした」

 と、先週掲載した「居留守文庫」店主の岸昆さん。折しも、居留守文庫で委託販売の希望者が増えていたこともあり、「日替わり店主の店」のアイデアが浮かぶ。客らに呼びかけると参加希望者が相次ぎ、発案からわずか2カ月弱で「みつばち古書部」が開店したという。

 約6坪の店内に、約40センチ四方の箱が104個並び、それぞれに店主がいる(複数の箱を借りるケースもある)形式だ。

「喜びを共有できるのもうれしい」と秋月さん

「面白いなー、と飛びつきました」と、この日店番をしていた、歴史本好きの秋月良太さん(38)。五木寛之の長年のファンで、映画と相撲の本も大量に持つ父(71)と、「獺祭文庫」の屋号で18年10月から参加。

「想定外だったのは、よく売れること(笑)。店番をしていると、本について話し込んでいく人も多く、喜びを共有できるのもうれしいですね」(秋月良太さん)

「獺祭文庫」棚は、宮部みゆき、井上章一から「フランス革命」まで、秋月さん父子の読書の幅を示す多彩な構成だ。一回りすると、橋本治だけが並ぶ棚あり、妖怪やお化けの本がずらりの棚あり。店主さんたち、どなたも個性的だな~。

 ここでは1箱を借りる値段が「月額550円(縦1列.4箱なら1650円)」と破格だ。売り上げの配分は、出品者70%、店番20%、管理費10%。店番は、壁掛けカレンダーに名前を書くと成立。店番の日は平台の上などに追加してたっぷり本を置ける上、自分の本の売り上げ配分90%。さらに、店には近隣の人たちから寄贈本が届くが、店番1回につき5冊まで持ち帰るも売るも自由。

 そんなこんなの仕組みにより、店側も店主たちも赤字にはまずならない。ましてや全体の運営が、岸さんの手をほぼ離れ、店主らが「自立」して行っていると聞き、たまげた。

◆大阪市阿倍野区昭和町1-6-3/℡06.6654.3932(居留守文庫)/地下鉄谷町線文の里駅7番出口から徒歩1分、御堂筋線昭和町駅1番出口から徒歩3分/時間不定、不定休

私の推し本

「観応の擾乱」亀田俊和著(中公新書 古本売価200円)

「時は南北朝時代。観応の乱は、征夷大将軍・足利尊氏と、弟の直義が対立する骨肉の争いから起き、そこに天皇家の争いが絡む、激しい内乱です。情勢は二転三転。戦乱前夜の動きも踏まえて1350年から52年にかけて読み解かれていて、ものすごく面白い。著者は、南北朝時代における室町幕府の政治史・制度史が専門の学者。学術本のエッセンスが、新書にまとめられているのです」(秋月良太さん)

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