著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

桔梗屋書店(目白)定番週刊誌から経済誌、学習誌まで雑誌中心の珍しい本屋

公開日: 更新日:

 目白通り沿い。ブルーグレーの窓枠がおしゃれで、以前から気になっていた。この日、窓に飾られていたのは、ファッション誌と大掃除のハウツー誌、来年の家計簿。

 店内に入る。8坪くらい。正面に「老後ひとり難民」「『せん妄』を知らない医者たち」が面陳列されていたが、その上に「昭和レトロ喫茶めぐり」「日本の名馬・名勝負」。そして左右のラックに、定番週刊誌から、旅行誌、経済誌のほか「世界の艦船」「ファミコン四十年生」といった趣味誌まで、ありとあらゆる雑誌が。この連載で初めての雑誌中心の店だ。

「美容院や病院への配達が多いんですよ。いっときタブレット利用に移りましたが、高齢の方の利用には紙の方がいいと戻ってきましたね。なので、ここは配達のベースです」と、店主の秋山栄一さん(74)。

 地元密着ですね?

「ええ。長いことは長いですから。近辺の“町の本屋”、ウチだけになっちゃいました」

強いジャンルは店主の趣味でもある車と鉄道関係

 1946年に店主の父が、この近くのお屋敷街に喫茶店を開業し、書店を併設したのが始まりだそう。店は界隈に住む文化人たちのサロンとなった……と、私は後で知るが、秋山さんはそんな過去の栄光話は率先してなさらず、「以前の店は25坪でしたが、せがれが継がないと言うので、夫婦2人でできるサイズのここへ移ってきて5年目です」と奥ゆかしい。

 では、「雑誌の中で、強いジャンルは?」と聞いてみよう。「車と鉄道関係ですね」と即答だった。右手に回り込んで、なるほど。「ベストカー」「Nostalgic Hero」「RIDING SPORT」、はたまた「鉄道ファン」「鉄道ジャーナル」「鉄道ピクトリアル」などがずらり。この規模にして、間違いなく高割合。

「もしやご自身の趣味も?」と重ねて聞くと、傍らで妻の京子さん(74)がにやり。「鉄道は子どもの頃から模型作りをね。1200㏄のハーレー、昭和41年製のホンダS800に乗っていたし」と秋山さん。す、すごい。類は友を呼ぶのだ。

 奥には、話題書中心の単行本の棚が2本。NHKテキストやコミック、子ども向け学習雑誌も一通りそろっている。

◆新宿区下落合3-22-17/JR山手線目白駅から徒歩8分/℡03-3951-5918/9~21時/無休

ウチの推し雑誌

「JWings」12月号
(イカロス出版 1540円)

 月刊誌。キャッチフレーズが「『ミリタリー機ってカッコいい!』がわかる」。

「12月号は、『KC-10 退役と空中給油機の科学』と題し、米軍の三発機KC-10エクステンダーの退役に合わせた、空中給油機の特集です。その誕生や運用状況など、さまざまな切り口で紹介。KC-10AがF-4DファントムⅡに空中給油を行っている1980年代の写真も載っていますよ」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    石井琢朗コーチが三浦監督との《関係悪化説》を払拭、「ピエロ」を演じたCS突破の夜

  2. 2

    旧ジャニーズ“復活”で女帝復権か…米国でスルー状態のTravis Japanを日本メディアが一斉ヨイショの裏

  3. 3

    いまや大谷ドジャースこそ「悪の帝国」だ…カネ&人気&裏技フル活用でタンパリング疑惑まで

  4. 4

    巨人、阪神などライバル球団が警戒…筒香嘉智に復活気配、球際の弱さからの脱却

  5. 5

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  1. 6

    甲斐拓也だけじゃない!補強に目の色変えた阿部巨人が狙うソフトバンク「Cランク」右腕の名前

  2. 7

    大谷翔平は来季副収入100億円ガッポリ、ド軍もホクホク! 悲願の世界一で証明した圧倒的経済効果

  3. 8

    橋本環奈《山本舞香と友達の意味がわかった》 大御所芸人に指摘されていたヤンキー的素地

  4. 9

    番長・三浦監督の正体《サラリーマン、公務員の鑑のような人格》…阪神FA移籍せず残留の真意、堅実かつ誠実

  5. 10

    カトパン夫の2代目社長は令和の“買収王”? 食品スーパー「ロピア」の強みと盲点