テレサ・テン“偽造”パスポート入国騒動
<1979年2月>
台湾出身のテレサ・テンがこの世を去ったのは95年。今も人々の記憶に残る歌手として人気は衰えないが、スキャンダルを背負った不遇な一面も持ち合わせていた。最初は26歳の時。“偽造”パスポートで入国し、国外退去処分を受ける騒動があった。
2月24日昼すぎ、東京都港区の東京入国管理事務所前に報道陣が集まっていた。偽造旅券を使って入国したという不法入国の疑いで、同事務所内に収容され続けていたテレサ・テンが釈放されるというのだ。
現れたテレサの表情からは疲れは見えなかったが、報道陣の偽造パスポートについての質問には答えることはなく、友人のシンガポール人女性やレコード会社社員に囲まれて車に乗り込んだ。処分は国外退去と1年間の日本入国禁止。行き先は成田空港。テレサは追いかけてきた報道陣におわびのメッセージを書いたメモを渡し、足早にアメリカへと立ち去った。
経緯はこうだ。釈放の7日前の17日。新宿の東京ヒルトンホテルに宿泊中のテレサの元に、東京入国管理事務所の係員が訪れた。入国管理事務所は在日インドネシア大使館から「中国系の女性がインドネシア人『テング・エリー』名義の偽造パスポートで日本に入国する可能性がある」という緊急通報を受けていた。その「テング・エリー」こそ、14日に香港から羽田空港に到着、日本に入国したテレサだった。