映画「さよなら歌舞伎町」「深夜食堂」なぜ大ヒットしている?
小規模公開の邦画が底力を見せている。「さよなら歌舞伎町」と「深夜食堂」だ。前者が18スクリーン、後者が80スクリーンながら、どちらの上映館も賑わっている。テレビで大々的に宣伝したわけではない。中身の面白さが、しっかり伝わっているらしい。
2作品の共通点は新宿を舞台にした群像劇であること。「さよなら歌舞伎町」は歌舞伎町のラブホテル。「深夜食堂」は新宿ゴールデン街を思わせる飲食店が軒を連ねる一角。そこで繰り広げられるそれぞれの人間模様が面白い。
「さよなら歌舞伎町」では、とくにラブホ店長役の染谷将太。仕事も不満、恋人の前田敦子ともうまくいかない。結局、故郷の東北へ静かに帰っていくのだが、そこに負け犬的な感じがないのが新鮮である。被災地の故郷で心機一転、彼は巻き返しを図るのだろう。
仕事のためには男と寝ることもいとわない前田敦子も染谷が去ったあとのマンションでひとり、下田逸郎の歌をギターを弾きながら歌う。このシーンは胸を締め付けられ、ジーンとくる。彼女もまた恋人を失った人生を生き直すのだ。