映画「マイ・インターン」に学ぶ 定年サラリーマンの処世術
定年後の生き方を描いた傑作だろう。公開されたばかりのロバート・デ・ニーロ主演「マイ・インターン」が素晴らしい出来栄えだ。すでに年配者中心にヒット中で、興収10億円を突破しそうである。
デ・ニーロが演じるのは定年後を悠々自適に過ごしてきた70歳の男、ベン。独り暮らしの寂しさもあり、あるとき一念発起、最先端のアパレル会社のインターンとして働き始める。
そして女社長を演じるのが「レ・ミゼラブル」などの個性派アン・ハサウェイだ。ベンはなぜか彼女付となるが、当然ながら、あまりいい顔はされない。しかし、人間関係に長け、会社内部のことによく気が付くベンは次第に女社長や社員たちの気持ちをつかんでいく。
社長の運転手の飲酒癖を見つけ、自分で運転して彼女の信頼を得る。うまくいかない男性の恋愛もアドバイスする。いつまでたっても仕事に慣れない女性には、社長にその彼女の長所を強烈にアピールする。
その際、仕事の内容には口出ししないのがミソ。息子や娘ほどの年齢の社長や社員に対して卑屈にならず、つねに自然な応対で接していくのだ。おそらく、現役時代のさまざまな経験をうまく生かしているのだろう。
新しい会社でも全然無理していない。その自然体が老後の人間関係を生きる上で、とても大切だと感じさせる。ただ、それを可能にするためには知力と経験値が断然、必要である。そのことが映画を見るとよくわかる。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)