ピース又吉&綾部は足りないモノを補い合う“理想の関係”
【連載コラム 2016新春「笑」芸人解体新書】
2015年、芥川賞受賞という芸人初の快挙によってお笑いの歴史にその名を刻んだピースの又吉直樹(35)。もともと読書好きとして知られ、文学に対する偏愛ぶりには定評があり、それに関連した仕事も多かったのだが、デビュー作で芥川賞を取ったのはさすがに衝撃的だった。
ただ、世の中はまだこの男の価値を測りかねている。何しろ得体が知れないのだ。
賞を取ってもあからさまに調子に乗ったりするわけでもなく、今まで通り淡々としている。芸人なのにテレビに出てもハシャいだりせず、前に出ようとしない又吉の姿を見て「すっかり作家先生気取りだ」などと揶揄する向きもあるが、彼がおとなしいのは以前までと変わらない。我先にと隙間を狙ってグイグイ前に出ようとする若手芸人ばかりが目立つ中で、又吉のたたずまいは異彩を放っている。
物静かに見えるのは言葉というものに対して人一倍、誠実だからだ。彼のような文学的感度の高い人間は言葉に敏感すぎるので、しゃべっている時にも無意識のうちに、自分の思いを正確に伝えるための表現を探し求めてしまう。その結果、他の芸人よりもワンテンポ遅れたゆったりした話し方になってしまうだけなのだ。