監督手腕にも疑問符 アンジ―「不屈の男」低空飛行のワケ
「今作の最大の欠点は、日本人がまるで描けていないこと。ザンペリーニに執拗な虐待を与えたMIYAVI演じる渡辺伍長以外のフツーの日本人が全く描かれていないため、いかに渡辺伍長がエキセントリックかが薄れてしまい、今どきのモデル顔で非現実的なMIYAVIの容姿も生きていなかった。もっとも、監督の力不足を埋めるかのように脚本のコーエン兄弟をはじめ、脇を固める製作陣は素晴らしい。音楽のアレクサンドル・デスプラ、撮影監督のロジャー・ディーキンスに至っては、2人で計20回以上のアカデミー賞ノミネート歴を誇る才能の持ち主。スタッフに恵まれ、驚くようなトンデモな駄作にならなかったものの、すべてが中途半端な印象です」
生還後のザンペリーニが福音派のキリスト教を信仰していたこともあってか、「ザンペリーニが柱を担ぐシーンはキリストの贖罪を彷彿とさせ、一部では彼をキリストに見立てた宗教映画などといわれています」(前出の前田氏)。
アンジーの意気込みも俳優も中身も公開時期もすべてがチグハグだったようだ。