洗礼は鴻上尚史のダメ出し 筒井真理子さんの駆け出し時代
何か面白い動きをしろということなのでしょうけど、私だけジイッと動かず、ジワジワと体に熱が入っていくのをイメージ。五感を研ぎ澄まし、内面から演じていくメソッドを実践したところ、「真理子、何やってんだ!」って。「スタニスラフスキー? そんなもん読むんじゃねえ」って怒鳴られました。「自意識過剰」だとか、鴻上さんに言われることが理解できず、答えは出してくれない。自分なりに考えても迷路にはまり、行き詰まったのを覚えています。
■筒井真理子を育てたもうひとりの恩人
そのころの私に、「何、弱気になってんの」と背中を押してくれたのが、木野花さん。劇団の垣根を越えて、女優が演技指導を受けたり、出演することがほとんどなかった時代ですが、鴻上さんが勉強になるだろうと、木野さんのところへ出してくれたんです。
木野さんの言うことはとても分かりやすく、第三舞台に戻った時に、鴻上さんから演技指導で言われたことを自分の頭で変換し考えて理解する、という基礎がついたと思います。
後年、鴻上さんから「俺はおまえを育てられなかったなあ。真理子を育てたのは木野さんだなあ」って言われた時、その器の大きさを感じました。