自分を殺し耐える女形で存在感 中村雀右衛門は“陰の主役”
猿之助は、昼は立役だが、夜は女形で、幸四郎の「一本刀土俵入」で、お蔦。これは「情のある女」なのだが、猿之助がやると、頭のよさが強調される。猿之助はこのところ幸四郎の相手役をつとめることが多い。気に入られているというか、息が合うのだろう。2人とも近代的というか合理的というか、頭で理解してから演じるタイプなので、そこが合うのか。長谷川伸が書いた、涙の人情芝居なのに、幸四郎と猿之助が演じると、ハードボイルドになるから面白い。
(作家・中川右介)