「未整理な人類」インベカヲリ☆著

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「未整理な人類」インベカヲリ☆著

 郵便ポストに高野豆腐2丁を入れたとして逮捕された女性、アイスクリーム、チョコレート、プリンといった甘いものを好んで盗み食いする事務所荒らしの男性、お地蔵さんを誘拐して金3000円を要求した正体不明の人物……世の中にはなんとも不可解な行動をする人間がいる。そんな理屈では割り切れない行為を著者は「未整理な行動」と名付け、コレクションした各種の事例を写真を交えながら(著者は写真家)独特な視点で描いていく。

 たとえば「鉄柱詩」。駅のホームの鉄柱に書かれた文言で、落書きというほど適当ではなく、文学性、芸術性を感じさせる怪文書だ。

 著者の初見は2019年末ごろ、東京のJR大久保駅の鉄柱に書かれた「成長する筋力で感じる鉄の重力」。以後、同じ作者のものと思われる鉄柱詩を収集していく。発見場所は中野、大久保、新宿と中央線沿い。書かれているのは、鉄柱のほか地図看板もあるが、鉄の素材に黒インクか鉛筆で書かれているという共通点がある。中には交番裏の地図看板に「殺人をしたのを他人とするなら法的なとっけんは解じょ」といった警察権力への批判のようなものも。しかし、この鉄柱詩、22年9月上旬を最後に忽然と姿を消してしまう。

 また長野市の善光寺にある「びんずる尊者像」が盗まれた際、その動機をチャットGPTに聞いてみると、金銭的、宗教的、利益追求の3つが挙げられた。ところが実際には「びんずるに恨みがあった」というもの。さすがのチャットGPTもこの答えは予測不能だったに違いない。

 そのように「理屈では説明がつかないのが人間という存在だ。チャットGPTの登場で、人間は堂々とトンチンカンになれる」のであり、そこに希望があると著者は言う。各種メディアからヘンテコな話題を集め、現場に駆けつけて写真に収める著者自身、未整理な人間を満喫しているようだ。〈狸〉

(生きのびるブックス 2310円)

【連載】本の森

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