商社マンが噺家に 立川志の春は入門翌年の“請求額”に仰天
もっとも、給料は出ませんから、生活費は自分で工面しなくてはなりません。二つ目になるまでにアパートは2回借りてるのですが、両方とも光熱費込みで家賃は約3万円。それに交通費と携帯電話代、食費を含めて月6万円が最低の生活費と見積もりました。それまでの貯蓄があり、9月末まで在籍したことでその年の冬のボーナスも出ましたから、「無収入でも2年以上イケる」。こう思っていたんです。
ところが、入門の翌年に健康保険料と年金、住民税の通知書が来てあまりの高額にのけ反りました。うかつにも前年の収入に対して正比例するのをすっかり忘れていたんです。これで最後のボーナスが全額吹き飛び、結局、サラリーマン時代に契約した生保は全部解約する羽目に陥りました。
収入はしばらく年10万円ほど。落語協会や落語芸術協会ですと、新宿末広亭、上野鈴本演芸場といった定席の下働きで最低限の生活費を稼げますが、立川流はそんな場を持っていません。そりゃ大変です。師匠や一門の師匠方の独演会の前座を務めてわずかな収入があるだけ。毎月の目標の6万円に手が届くようになったのは入門5年後。師匠や兄弟子、先輩の落語家、ごひいきさんからいただくお年玉は本当にありがたかったですよ。
それと物産時代の元上司や同期にどれだけ助けられたことやら。食事をごちそうになり、勉強会の時に連絡すると誰かが来てくれました。真打ちまでもうひと頑張り。これからも落語を楽しみながら精進したいと思っています。