日常を大事に自由に “おばあさんの達人”樹木希林の死生観
背中を丸めることはもちろん、「骨を抜く」ように「腰を落として、厚みを全部横へ流す」という。そうやってリアリティーあふれる「おばあさん」を演じてきたのだ。
まさに達人。屈指の「おばあさん」女優である。そうして演じ続けているうちに、実年齢が追いついてきた。
樹木希林が被写体となった「死ぬときぐらい好きにさせてよ」という、宝島社の企業広告のコピーは大きな話題になった。けれど、彼女は「あれは私とは違うの。私はふだんから好き勝手しているから」(朝日新聞出版「AERA」17年5月15日号)と語る。
確かに彼女は日常から自由に暮らしているイメージが強い。
「やっぱり役者だから、日常生活をしないと役を演じる上でいざというときに損しちゃう。私は車の運転もするし、なるべく1人でやっちゃうの。事務所もなし。留守電で十分。人がいる方が手間がかかる、そんな気がします」(「産経新聞」15年5月25日付)
役者として日常を大事に自由に生きている。だからこそ、大病を患い、「死」がリアルに迫っていても「おばあさん」を演じることをやめない。むしろ、ますます精力的にも見える。
「死ぬということは悪いことではない。当たり前のこと。『生きているのも日常、死んでいくのも日常』。私はちゃんと見せていきたい。そういう事を伝えるのも、死んでいく者のひとつの役目かなぁと」(oricon ME「ORICON NEWS」16年1月5日)