「日本の黒い夏-冤罪」 松本サリン事件の冤罪描く問題作
2001年 熊井啓監督
オウム真理教の幹部7人が死刑を執行された。本作は彼らが起こした松本サリン事件(1994年)で犯人扱いされた河野義行氏をモデルに冤罪の恐怖を描いた問題作。
95年6月、高校で放送部に所属するエミ(遠野凪子)は前年のサリン事件について地元のテレビ局を取材する。事件では第一通報者の神部(寺尾聰)が犯人のような報道がなされた。
応接室で対応したのは4人。事件当時、報道部長の笹野(中井貴一=写真)は冤罪を回避しようとした。一方、記者の浅川(北村有起哉)は警察に情報リークを求め、神部犯人説を補強する取材に奔走。後輩記者の野田は自分が報じた学者の話が不完全だったと知って自責の念にかられる。キャスターの圭子(細川直美)は浅川、野田の言い分を総括しながら、エミの取材に協力する。
米国映画「十二人の怒れる男」(57年)を思わせる密室劇。再現映像を差し挟んでは応接室に戻り、記者の自己弁護と反省を追いながら真実に近づいていく。
神部宅に隣接する駐車場からサリンが発生し、彼が青酸カリを持っていたことを警察は発表。マスコミは神部犯人説を妄信して警察が喜ぶような報道合戦を展開する。