「日本の黒い夏-冤罪」 松本サリン事件の冤罪描く問題作
警察は神部に犯行を自供させたい。そのためサリンで心身がボロボロで医師から「事情聴取は2時間」と制限されている神部を7時間も尋問する。子供たちが待つ神部宅には「街から出ていけ」と嫌がらせ電話がかかり、石を投げられる。
笹野が神部犯人説に偏らない中立な報道をすると、会社はスポンサーの意向を忖度してストップをかけ、視聴者は「犯人は神部だ」と番組にクレーム電話。刑事の吉田(石橋蓮司)は県警の上層部がカルト教団を怪しみながら、神部を犯人に仕立て上げようとしている内情を笹野に明かす。狂言回し役のエミの鋭い質問によって浅川が報道の行き過ぎを認め、冤罪の構図が浮き上がるのがミソだ。
圧巻は事件の再現シーン。不気味ないでたちの連中がサリンを発生させ、穏やかな時間を過ごしていた人たちを次々と死に追いやる。8人もの人命が奪われたことをあらためて認識させられる凄惨な映像だ。 (森田健司)