「売れると、飲みたくもないお茶が出てくるんだよ」
「売れるということを実感した」清志郎は、「自分の詞や発言が、文化人に評価されて、何倍にも膨れ上がって偉大なものになっているのにビックリ」し、「忌野清志郎の株は上がったけれど、ただそれで文化人みたいな仲間に入れられるのはあんまり好きじゃない」と語っている。
「作風は以前と変わってないんですね。売るためにあの手この手で変えたわけではない。それなのに、自分が考えてもいないところで、高尚な芸術と同等の解釈を受けて、『あらためて自分に驚いたりした』と。のちに、『取材とかで、喉が渇いてもお茶ひとつ出なかったけど、売れると、飲みたくもないお茶もどんどん出てくるんだよ』と酸いも甘いも噛み分けた現実的な話もしてました」
アルバムに先行してシングルリリースされた「雨あがりの夜空に」に続き、80年10月発売のシングル「トランジスタ・ラジオ」もスマッシュヒットする。同曲で清志郎は、授業をサボり、「♪寝ころんでたのさ 屋上で たばこのけむり とても青くて」と、若者の等身大の倦怠感や焦燥を歌に託した。
石川啄木が15歳の頃を思って歌った、「不来方の お城の草に寝ころびて 空に吸はれし十五の心」という短歌にもどこか雰囲気が似ている。