海外映画祭で快挙 舘ひろしが捨てたダンディと過去の栄光
このイメチェンには、ベテランの芸能関係者も驚いていた。
「舘は素顔もダンディーで、こまやかな気配りやスマートさで知られている。趣味もゴルフにバイクに乗馬にヨットと幅広く、超のつくプレーボーイで鳴らした頃のエピソードはいくらでもある。中高年になっても、年齢を受け入れず、いつまでも若いつもりで女に手を出したりして、煙たがられている男は少なくないが、舘の場合はプレーボーイとしての魅力も衰えていないだろうに、定年サラリーマン役で海外映画賞とは大したもの。どうしちゃったのかと思うくらいですよ」
演技とはいえ、受賞作での舘は家での居場所も見つけられなければ、再就職先も、やりたいこともなく、途方に暮れる60男になり切っていた。素顔を知る関係者なら驚いて当然か。
「どんなことでも、オファーをいただければやっていきたい」と謙虚に語るところといい、年齢や仕事に対する姿勢といい、世の中高年男も見習うべきかも知れない。芸能プロデューサーの野島茂朗氏はこう言う。
「どれほど二枚目でかっこいい俳優でも、中高年になると、ある意味ダサさも演じられる幅広さがないと仕事にならないのが今の時代です。そういう風潮も、舘さんはきちんと受け止めているのだろうと思います。『終わった人』ではバブル後遺症世代といいますか、過去の栄光をどこかに引きずる男の役でしたけれど、石原裕次郎さんと同じ二枚目路線を目指しがちな石原プロにおいて、それだけではダメだと考えて、路線変更に乗り出したとすれば、今回の役柄も舘さんの俳優人生とダブって見えてくる。60代以降を活発に生きるアクティブシニアになる秘訣は、過去の路線を断ち切るということでしょう」
自らの老いを自覚し、受け入れてこそ新たな生きる道が開けるもの。過去の栄光にしがみつき、年甲斐もない言動が目立つ中高年は舘の爪のあかでも煎じて飲むべきだろう。