十朱幸代さん デビュー作で共演した岩下志麻さんの思い出
デビューは1958年から5年間、生放送されたNHKの伝説の連続ドラマ「バス通り裏」。当時高校生だった十朱幸代さんをヒロインに、岩下志麻、田中邦衛、米倉斉加年、常田富士男ら後にドラマ、映画界で活躍する名優が出演した。とっておきの一枚は「バス通り裏」時代の岩下志麻(写真(左))とのツーショットだ。
「バス通り裏」は美容院と高校教師の家族を描いたホームドラマ。19時のニュースの後、19時15分から30分まで生放送された。ヒロインには名優・十朱久雄の娘、幸代さんが選ばれ、美容院の娘・元子役を演じた。高校生の十朱さんは学校を早退して、スタジオ入りする毎日だった。
「あの頃はテレビの白黒放送が始まって4、5年の時代でしょ。スタッフもカメラマンもお友達感覚で、私なんてふざけてマイクを振り回してましたもん(笑い)。本番の時にリハーサルではやらなかった面白い顔して怒られたこともあったし、1日に1回は失敗してましたね。生放送だからシーンが長引いたりするのもしょっちゅうで、スタッフが『巻いて! 巻いて!』って焦ったり、逆に引き延ばす時はこうやるから(両手で左右に引っ張るしぐさ)、放送中なのに、『うるさい!』って言っちゃったり(笑い)。まだ高校生だったし、仕事というより遊び感覚でした(笑い)」
十朱さん演じる愛くるしく、奔放な元子は国民的な人気になったが、同時にこのドラマで女優デビューしたのが2歳上の岩下で、元子のクラスメートを演じて注目を集めた。その頃の貴重なツーショットである。
「岩下さんはこの頃から細くて、スッとした美人で本当に羨ましかったですね。今でも覚えているのはあんまり食べないこと。私はというと、食べ盛りでものすごく食欲があって食べ放題(笑い)。当時はスタジオに出前を持ってきてもらうことができた時代で毎日2回は店屋物を食べていました。洋食屋さんならスパゲティやオムライスにプラス、ハヤシライスとか。『元子のギャラは全部食べ物だよな』なんて言われてました。そんな時に岩下さんはサラダにごはんとか。すごく食が細かったですね。食いしん坊の私はいつも『えー!?』って感じでした」