中3で父が病に倒れ…高校入学と同時にアルバイトを始める

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同級生よりは少しだけ精神的に自立していった

 将来の夢は良妻賢母。子どもが3人くらいいて、まだ見ぬ娘の着物を自分で縫うつもりでいた。中学になるとセーラー服を着るのがうれしくて、おしゃれに目覚める。髪を伸ばしドライヤーでファラ・フォーセットのような流行のレイヤーにした。といっても、制服のスカートを足首が隠れるほど長くする子がいるなか、私は標準スタイルで、ツッパリをまねた不良グループにも優等生グループにも属さない、普通の、目立たない生徒であった。部活は美術部。楽しみはというと土曜日に持っていくお弁当を自分でつくること。3歳年上の兄が使っていた薄く押しつぶした革の学生カバンだけが背伸びしていた。

 教室では、たのきんトリオなら誰が好きかとか、休み時間の話題はアイドルとテレビで、話をして合わせるためにヨッちゃんファンを名乗る。本当は中村雅俊さんと柴田恭兵さんが大好きだった。姉と共に見ていた「俺たちの旅」は私8歳、「赤い嵐」は11歳のころ。年上の男性に胸を焦がした。

 中3のときに父が救急車で病院のICUにかつぎ込まれる。

「酒をやめないと長くない」と医師に宣告された。棟梁だから仕方ないかもしれないけれど、お酒が大好きだったのだ。飲みすぎたときは管を巻いて母とケンカになる。そんな夜は姉兄妹揃って、さっさと2階に上がって避難した。ラジカセから、アリス、かぐや姫、オフコース、イルカさんの歌が流れていた。

 父はそれでもお酒をやめられず、働けない体になってしまう。母はパートに。私は行きたかった私立の高校を諦めて、交通費もかからず、学費も安い地元の県立へ進学する。入学と同時にアルバイトを始めた。不二家で時給380円。酔ったサラリーマンが家族への罪滅ぼしのためにケーキを買っていた。

「お金を貯めて、キタキツネを見に北海道へ行こうね」 

 友だちとそんな目標を立てたものだ。やがて家事は母並みにこなせるし、お小遣いも自分で稼ぎ、同級生よりは少しだけ、精神的に自立していったと思う。「おニャン子クラブ」につながるオーディションを受けるのは、2年のときだ。 =つづく

(聞き手=長昭彦/日刊ゲンダイ

▽にった・えり 1968年生まれ。85年、おニャン子クラブ会員番号4番でデビュー。翌年「冬のオペラグラス」でソロデビュー。その後、タレント、女優、作家として活躍。趣味はハンドメード、DIY、旅行。現在は寝たきりの実母の介護をしながら、夫とチワワ2匹と湘南に暮らす。

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