演劇にはドラマでは決して得られない“贅沢”がある
今作の演出を手掛けるのは、英国ロイヤルバレエのダンサー出身にして国際的な振付家・演出家のウィル・タケット氏(写真(左))。ウィルさんはほとんど日本語が分からないので、セリフに込められた真意や動機を言葉ではなく印象で察する。だから上っ面で流暢なだけのセリフ回しは即バレる(バレた)。そしてこうも言われました。
「シンヤ、物(小道具やセット)に頼るな。そんなもの使わなくても私には十分伝わった」
……僕は笑いながら泣いてしまった。道具をうまく芝居に織り交ぜていたつもりが、実は道具の持つ〈意味〉に頼っていた。無意識だった。そしてそんな必要はないと注意されつつも褒められたのだ。やはり演劇の現場は深い。そして贅沢(ぜいたく)だ。こんな指摘、ドラマの現場ではまず得られない。そういう作り方を経ているわけです。
そりゃ見てもらいたいですよ! ね?
【今週の格言】
劇場とは、見えるものに出会い、それを通じて、見えるものの中に何があるかを感じることができる場所だ。(byピーター・ブルック)