浅草演芸ホールのお客は素直というか子供っぽいというか…
美空ひばりの生涯を描いた作品もある。少女時代のひばりから、東京ドームでのラストコンサートまで描いたものだ。
「バックに『川の流れのように』を流しました。切ったものがつながることでストーリーができるでしょ。それと、サンバカーニバルもやりましたね」
この手法は小正楽の売り物になった。鈴本演芸場は上野動物園に近いので、「パンダ」という注文が多く出る。正楽が切るパンダはさまざまなポーズがあり、それがOHPに映し出されると細部までよく見える。
「浅草演芸ホールのお客は素直というか子供っぽいというか、『馬』を切ると次に『牛』という注文が出る。ただ牛を切っても能がないから、牛車とか牛に天神様が乗っているところを切ります。夏によく出る『風鈴』にしても形だけ切るのでなく、軒端に風鈴が下がっていて、男女が夕涼みをしている情景を切るわけです」
つまり、客の注文にプラスアルファを付けて切るのが芸ということなのだろう。読者の皆さまも、一度寄席で正楽に注文してみたらいかがか。 =つづく