ヒット映画に生け花、相撲…世界共通のお題は「ドラゴン」
「ドラゴン(竜)ですね。どこの国でも出る。ひょっとして、あたしのことを、中国人だと思ってるのかも」
最近、正楽が、「ボヘミアン・ラプソディ」という注文を受けて、フレディ・マーキュリーの姿を切ったのを見て驚いた。
「映画がヒットしたせいで、たまに出ます。最初に注文されてすぐ切れたのは、20年くらい前に南アフリカ共和国のケープタウンに行った時、『フレディ・マーキュリー』というオーダーがあったんです。当時はクイーンもフレディも知らなかった。舞台袖にいた日本人通訳に、『それ、なあに』って聞きましたよ。そうしたら『ロックバンドのボーカル。口ひげ生やしてて、上半身は裸でいい』と言うから、その通りに切ったらけっこう受けました。その経験があったので、即興でもうまく切れたんです」
優れた芸を持つ色物は、落語家に一目置かれる。自分がトリを取る際にヒザ代わりで出て欲しいからだ。しかし、中には色物を見下す者もいる。
「自分より色物のほうが寄席の出番が多いのをやっかんでる人です。売れてる人はけして色物を見下しません。存在価値を認めてますから。最近の若手も皆さん敬ってくれます」 (つづく)