新境地でもあったこの作品ににじみ出た芯の強さこそ、「やすらぎの郷」にも受け継がれていると見るべきだろう。可憐さ、美しさだけの女優では全くない。内に秘めたものが突発的に飛びでてくる。そこには表情とは裏腹な底知れない怖さも際立つ。名だたる監督や脚本家たちは、そのことを熟知していたに違いない。
「阿修羅のごとく」や「岸辺のアルバム」など70年代のテレビドラマにも魅せられた。八千草薫さん。亡くなられても、どこか笑顔の表情が浮かんでくる方だ。ただ、この笑顔の奥にあるものはなかなかに深い。ご冥福をお祈りする。