銀幕に存在感を焼き付けた純粋に欲どしい俳優・宍戸錠
再会したのは6年後の、松竹映画「釣りバカ」と併映の「さすらいのトラブルバスター」という、テレビ局のよろず揉め事処理係が奮闘するコメディー。大手芸能プロの社長役で迎えた時だ。
「カントク、まだ日活の実録小説書いてんだけどさ」と言われた。「早く仕上げて下さいよ。映画化しますから」と言うと、「よっし! 書く」とあの頬張った顔を赤らめていた。その後は深夜ドラマと、豊頬を元に戻した手術後の新幹線の中だった。「大丈夫ですか? ぐっと男前ですね」と言うと、「カントク、『シシド 小説・日活撮影所』出したからさ」と。それは昭和の活動屋の夢の記録だった。