ヒット映画「Fukushima50」よりも秀逸で見直されたNスペ
同じ事故をテーマに、同じ関係者らから話を聞いて製作しているのだから、ストーリーが似るのはわかるが、カメラアングルまで同じシーンがいくつもあるのは鼻白む。打つ手がなくなり床にへたり込む吉田所長、放射線量が高くて開閉バルブまでたどり着けず泣き崩れる作業員など、テレビで見たまんまだ。内容的にもNスぺのほうが濃く、見ごたえもあるというのでは、映画としては失敗だろう。
なにより致命的なのは、事故を天災として描いていることだ。地震と大津波は天災だが、事故は人災である。そこにウソがあるから、なぜ事故が起こったのかも、福島の現場が何と闘っているのかもわからない。映画のなかの男たちは、ただただ怒鳴りあっているだけである。
Nスぺシリーズも東電や歴代政権の事故責任に迫っているとは言いがたいが、少なくとも映画よりは事故の実態に迫ろうとはしている。これまでの放送は、NHKのオンデマンド配信で見ることができる。
(コラムニスト・海原かみな)