コロナとテレビ<下>メディアとしての矜持がかかっている
代理店筋によると先月のあるテレビ局の収入は、昨対比でマイナス40%、2011年の「東日本大震災」の時の広告収入減をはるかに超えることが確実だという。収録も中止になり、新しいコンテンツがなくなったことに頭を抱えている。「だったら再放送していればいいじゃないか」という人もいるが、民放だと広告収入が減ってしまうのだ。
しかし、公共放送のNHKだけは違う。収入源は受信料なので、収入面で世間の影響を受けない。受信料を支払っている視聴者に多少の増減はあるかもしれないが、コロナでも昨対比は100%なのだ。広告クライアントのことを気にせず番組制作ができるし、大河ドラマ、紅白歌合戦など素材は潤沢。こんなときこそNHKの映像アーカイブとしての存在意義が際立つ。
ここで各局一律の対応をするか、予想もしないユニークなコンテンツを繰り出すかは、まさにテレビメディアの矜持がかかっている。それは、歴史的傑作映画の解説付き放映でもいい、名人による落語の生放送でもいい、名音楽家による生演奏でもいい。テレビは安易に再放送などせずに各自のチャンネルの名を上げて欲しいものである。