横山やすし師匠は浪花の暴れん坊 開演10分前に「帰る!」
「浪花の暴れん坊」と呼ばれ、高速の出口を間違えた弟子にバックで戻らせたとか、交差点の真ん中に車を止めて銀行へ行ったとか、その真偽はわかりませんが数々の伝説を残された“天才漫才師”横山やすし師匠。いまのようにコンプライアンスが声高に言われる時代には存在しえない「昭和の芸人」さんだったのかもしれません。
私も一度だけ、それも初対面の時に“伝説”に遭遇したことがあります。
1984年の暮れ、場所は「うめだ花月劇場」。正月番組の収録で、桂三枝(現・桂文枝)、横山やすし・西川きよし、オール阪神・巨人の3組が出演する「新春爆笑ビッグ3」。私にとっては初めての全国ネットで、阪神・巨人さんの台本を担当した日でした。順調にリハーサルも終わり、お客さんも超満員。
開演を10分後に控えた楽屋でトップ出番の阪神・巨人さんとネタの確認をしている時に、突如響いたやすし師匠の一言。
「帰る!」
言葉と同時に、正月番組らしい羽織袴の衣装を手早く脱ぎ捨て、私服に着替えていく……。「あの師匠……」と、どうしていいかわからず、オロオロするプロデューサー。